※本記事にはアフィリエイト広告(PR)が含まれます。
ほしいおもちゃがあるのに、あと100円だけ足りない。子どもの頃にそんな悔しさを味わった経験がある方は多いと思います。
藤子・F・不二雄のSF短編『ぼくのロボット』は、そんな男の子の前に、持ち主が分からない小さなロボットが現れるところから始まります。『ミノタウロスの皿』のような重い作品の印象が強いSF短編シリーズの中では、とびきりやさしい一篇です。
この記事では、作品の基本情報とあらすじを紹介し、そのあとに感想をまとめます。結末に触れる部分は見出しで分けてありますので、未読の方はご注意ください。
『ぼくのロボット』の作品データ
- 作者:藤子・F・不二雄(発表当時は「藤子不二雄」名義)
- 初出:『こどもの光』(家の光協会発行、現『ちゃぐりん』)1970年1月号
- 形式:読切のSF短編(子ども向けに描かれた「少年SF短編」の一作)
- 主な収録:『藤子・F・不二雄SF短編〈PERFECT版〉』第1集、『SF短編コンプリート・ワークス』第10巻『征地球論』、『藤子・F・不二雄大全集 少年SF短編』第3巻など
掲載されたのは小学館の雑誌ではなく、農協系の出版団体が会員向けに出していた子ども雑誌です。誌面の雰囲気を反映してか作品全体にやさしい空気が流れています。
あらすじ(ネタバレなし)
主人公は、名前の出てこない男の子です。おもちゃ屋のショーウィンドウに飾られた最新のロボットがほしくてたまりません。ところが、もらったお年玉だけではあと100円が足りません。母親にねだっても、無駄づかいはいけないと取り合ってもらえませんでした。
そんな少年の目の前で、お金持ちの友達が、たいしてほしくもなさそうにそのロボットを買ってしまいます。外でうれしそうに遊ぶ友達を見て、少年は「なんとしても手に入れたい」と決意。道に100円が落ちていないかと、きょろきょろしながら歩いていると、見たことのないロボットがひょっこりと姿を現します。
デフォルメされた愛嬌のある姿で、まわりに持ち主の姿はありません。少年は友達に自慢するために、少しだけ借りてみることにしました。
ネタバレありの展開と結末
※ここから先は結末に触れます。未読の方は、次の「読んだ感想」まで読み飛ばしても構いません。
自慢しに行くと、金持ちの友達はもう新しいロボットに飽きていて、モデルガンを見せびらかしていました。しかも、さっきまで遊んでいたロボットを的にして撃ち始めます。その様子を見たふしぎなロボットは怒り、ぶつけられた石を超能力で友達たちにぶつけ返してしまいました。
気味が悪くなった少年は家へ逃げ帰ります。けれども、ロボットはどこまでもついてきます。怖くなった少年は、二階の窓から外へ捨ててしまいますが、しばらくして窓の外を見るとロボットがぐっしょり濡れて転がっていました。泣いていたのかもしれない——そう思った少年は、はげてしまった塗装を塗り直してやります。ここから、少年とロボットは少しずつ距離を縮めていきます。
ロボットか、モデルガンがほしい少年は、筋金入りのケチで知られる「ケチ三おじさん」にお年玉をねだります。当然、簡単にはもらえません。そんなとき、ロボットがどこからか持ってきた銃をケチ三おじさんが手にしたことで事態は思わぬ方向へ動きます。その銃は本物で、銃を探していた持ち主に見つかり捕まってしまったのです。
おじさんがいなくなったと知った少年は、ロボットとともに救出に向かいます。危機一髪のところで、ロボットがおじさんを助け出しました。銃の持ち主は、指名手配中の犯人でした。命を救われたおじさんは、お礼として、財布ごと少年にお年玉を渡します。
「これからも仲良くしてくれよ」と願いながら眠った、その夜のこと。突然、円盤が姿を現します。ふしぎなロボットは、じつは宇宙人のロボットでした。宇宙人からお礼を言われた少年は、ロボットを笑顔で見送ります。
読んだ感想:やさしさとややこしさ
📌 「あと100円」の悔しさが、ちゃんと子どもの目線
貯金では足りない、親には断られた、友達は自分より先に買ってしまった。少年の置かれた状況は子どもにとってなかなかの絶望です。物語の入り口が、読者の身近な悔しさに根ざしているので、ロボットが現れたときの「助かった」という感覚にも素直に乗れます。
📌 ケチ三おじさんの存在がいいスパイスになっている
ただのほのぼのした話で終わらないのはこのおじさんのおかげです。倹約家というより、かなりクセが強く、やっていることも危うい。子ども向けの雑誌に載った作品でありながら、ちょっとした毒が混ざっているところに、藤子・F・不二雄らしさを感じます。
📌 別れの場面が、あっさりしているから切ない
円盤が現れ、ロボットは持ち主のもとへ帰っていきます。少年は笑顔で見送りますが、仲良くなったばかりの相手との別れが、そう簡単に割り切れるものではないことは読者のほうがよくわかっています。大げさにしない描き方がかえって余韻を深くしているのだと思います。
『ぼくのロボット』が読める本
『ぼくのロボット』は、藤子・F・不二雄のSF短編をまとめた複数のシリーズで読めます。選びやすいのは、次の2種類でしょう。
- 『藤子・F・不二雄SF短編〈PERFECT版〉(1) ミノタウロスの皿』:同じ巻に『スーパーさん』『ミノタウロスの皿』『カイケツ小池さん』などが入っています。やさしい話と重い話の振り幅を、一冊で味わえます
- 『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス』第10巻『征地球論』:「少年SF短編」を発表順にまとめたシリーズの最終巻で『スーパーさん』と並んで収録されています。
藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>(1)ミノタウロスの皿 【電子書籍】[ 藤子・F・不二雄 ] 価格:1320円 |
『ぼくのロボット』【まとめ】
『ぼくのロボット』は、ほしいものに手が届かない少年とひょっこり現れた小さなロボットの短くてやさしい物語です。派手な仕掛けはありませんが、ひとつひとつの場面が丁寧で、最後まで読むと、少し寂しくて、少しあたたかい気持ちになります。
SF短編に重い作品が多いと聞いて、手に取るのをためらっている方にこそ、まず読んでほしい一篇です。ロボットが窓の外に立っているあの場面を、ぜひご自身の目で確かめてみてください。
